脳のMRI検査でわかること|どんな病気が見つかる?

MRIとは、磁気と電波を利用して体の断面を撮像する検査機器のこと。トンネルのような筒形の機器に入り、脳梗塞や脳腫瘍、脳出血などの脳血管疾患の有無を調べることができます。また近年ではMRIの撮影画像とAIにより、認知症リスクを調べる検査も登場しています。 この記事では脳のMRI検査でわかること、見つけられる疾患について解説します。

記事監修
認知症検診LiST 編集部
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MRI検査とは|脳疾患とがんの早期発見に有用

MRIとは「Magnetic Resonance Imaging」の略で、磁気共鳴画像診断のことをいいます。強力な磁場を発生させたトンネルのような筒形の機器に入り、特定の周波数の電波を照射して、体の内部の断面をさまざまな角度から撮影します。この撮影画像をもとに病変の有無を調べる検査です。

MRIは脳血管疾患だけでなく、ほぼすべてのがんの有無を調べる検査としても用いられています。特に、乳腺、肝臓、子宮、卵巣、前立腺など、CT検査では正常な組織かどうかを判別しにくい臓器に生じるがんの早期発見と診断に有用です。

MRI検査の流れと仕組み

撮影する部位にコイルを装着し、寝台に仰向けに横たわります。そのまま強力な磁場が発生しているトンネル型のMRI機器に入り、検査部位に特定の周波数の電波を照射します。
この強力な磁場を発生させる際、機器からは工事現場のような大きな音がするため、あらかじめヘッドホンや耳栓などを装着する場合もあります。

強力な磁場の中で特定の周波数の電波を照射すると、体内の水素原子が移動します(これを磁気共鳴といいます)。一定時間が経過後に照射をやめると、移動した水素原子などの組織が元の場所へ戻ろうとします。この動きを画像として取得し、脳梗塞や脳腫瘍などの異常を発見するのがMRI検査です。

検査は30〜45分ほどの時間がかかります。より正しい画像を取得するために、検査中はできる限り同じ姿勢を保つことが必要です。

参考:国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス「MRI検査とは

脳のMRIでわかること|検査種類と見つかりやすい疾患

脳の疾患がないかを調べる場合、頭部MRI検査、頭部MRA検査、頸部MRA検査などが行われます。一般的に「脳ドック」といわれる検査コースには、この3つの検査が含まれていることがほとんどです。
MRIとMRAの違いは後半で詳しく解説しますが、ここでは検査種類ごとに見つかりやすい疾患をまとめます。

検査名見つかりやすい疾患
頭部MRI検査脳腫瘍、脳梗塞、脳出血
頭部MRA検査脳動脈瘤、脳動脈硬化、椎骨動脈解離、脳血管の閉塞や狭窄
頸部MRA検査頚動脈血栓、頚動脈硬化

大きくまとめると、MRI検査で見つかる「脳梗塞」の原因でもある動脈瘤や動脈硬化の有無を、MRA検査で調べています。そのためこれらの検査を同時に行うことが、脳血管疾患のリスクを総合的に把握することにつながるのです。

MRIとMRAの違いは「断面と血管」

多くの場合、セットで行われることが多いMRIとMRA。似たような名称で、同じトンネル型の機器に入って行う検査ですが、その違いは以下のとおりです。

MRIとMRAの違いは「断面と血管」

*MRI検査は、脳の断面を画像化する

強力な磁気と電波によって細胞間を移動する水を共鳴させ、得られた情報を画像化します(Magnetic Resonance Imaging=磁気共鳴画像法)。ここで撮像されるのは脳の断面です。脳腫瘍の有無、脳梗塞や脳出血の有無や大きさを調べることができます。

*MRA検査は、脳の血管を立体画像化する

MRIと同様、強力な磁気と電波を用いて血流の信号をとらえ、血管を立体画像化します(Magnetic Resonance Angiography=磁気共鳴血管画像)。脳動脈の狭窄や閉塞、くも膜下出血の原因となる未破裂脳動脈瘤の有無を調べることができます。
また、頸部にある動脈の狭窄が脳梗塞につながる恐れもあるため、脳血管疾患のリスクを調べる場合は頸部MRAや頸動脈エコー(超音波検査)を同時に行うことも有用です。

認知症リスクがMRIとAIで判明する時代

日本は2007年、65歳以上の割合が全人口の21%以上を占める「超高齢社会」に突入し、2021年8月現在でその割合は28.8%(3,618万9千人)に達しました。高齢者割合の増加傾向は令和24年まで続くと見込まれています。
これに比例して認知症高齢者の割合も増加しており、2012年には推定462万人といわれていましたが、2025年には65歳以上の5人に1人を占める約700万人に達するという推計が出ています。

参考:総務省統計局 人口推計(令和3年(2021年)8月確定値)2022年1月20日公表、内閣府 令和3年版「高齢社会白書」、厚生労働省 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)

誰もが関わる可能性のある認知症ですが、一方で明確な治療薬がなく、認知症と診断されると改善することはない、進行するばかりだと考える方が多いかもしれません。しかしさまざまな研究が重ねられ、現代では認知症の兆候を検知する検査が増えてきました。
こうした検査を活用して認知症の”きざし”を見つけ、早期から対策をすることで発症や進行を遅らせることができると考えられています。

MRIとAIで認知症リスクがわかる

MRIでは脳の萎縮状態を確認することができますが、アルツハイマー型認知症の初期段階では海馬とよばれる部分の萎縮が見られます。近年ではMRI画像とAIを活用し、海馬の体積を測定して認知症の発症時期を推測できる検査も登場しています。
脳の萎縮は、発症の10年以上前から始まるともいわれます。健康寿命の延伸をサポートしてくれる検査は、今後ますます注目されていくでしょう。

MRIが受診できないケースとは

造影剤を投与せず、被ばくの恐れもないMRIの脳検査は体への負担が非常に少ない検査です。しかし強力な磁気を使うため、受診ができない方や事前相談が必要な場合があります。以下のケースを参考にしてください。
※MRI機器の種類や検査部位によっても条件は異なります。不安がある場合は必ず事前に受診医療機関へ相談しましょう。

MRI検査が受診できないケース

  • ペースメーカーや人工内耳などを装着している
  • 磁石を使ったインプラント(義歯)を装着している
  • 金属使用、または可動型義眼を使用している
  • 骨折治療により金属プレート等が体内に埋め込まれている

事前相談・申告が必要なケース

  • 入れ墨、アートメークがある
  • 閉所恐怖症
  • 妊娠中または妊娠の可能性がある

まとめ|脳血管疾患だけでなく認知症リスクもわかるMRI

MRI検査は磁気と電波を利用して体の断面を撮像します。脳の疾患を調べる場合は頭部MRI検査とともに、頭部MRA検査、頸部MRA検査がセットで行われることが多いでしょう。これらの検査では、脳卒中(脳梗塞や脳腫瘍、脳出血)などの脳血管疾患、脳動脈瘤、脳動脈硬化などの有無を確認します。
また近年では、MRIとAIにより認知症の発症時期を推測できる検査もあります。超高齢化社会といわれる日本、MRI検査を活用して健康管理に役立てましょう。

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